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コラム

スウェーデンの数学教育

-ICME10に出席して-

2005年6月3日

東京理科大理学部 澤田 利夫

1. 教育制度

スウェーデンは、大胆な教育改革を行う国として有名である。1996年度から試行の学校教育制度はわが国とほぼ同じで、9年制の義務教育(基礎学校)と3年制の高等学校から成り立っている。基礎学校は1〜5学年と6〜9学年の2段階に分れ、5学年と9学年で全国統一試験(スウェーデン語、英語、数学)が行われ進級のための評価基準が示される。落第もあるが、高校や大学への入学試験はなく内申書で決められる。

高校には、17の専門コースが用意されていて、それは以下のようなものである。
児童・レクレーション、建築、電子工学、エネルギー、芸術、自動車、ビジネス・経営、手工業、ホテル・レストラン、工業、食品、マスメディア、天然資源利用、健康、テクノロジーなどの職業系コースのほかに、大学進学を希望しているもののための自然科学(数学とコンピュータ科学、環境科学、自然科学)と社会科学(経済、文化、社会科学、文学)の理論系コースがある。
しかし、一定の要件を満たしていれば職業系のコースからでも、また職業経験者のリカレント教育制度で大学に進学もできる。2002年度の統計によれば、高校卒業者の約43%は大学などの高等教育に進学している。

2. 数学教育

スウェーデンの基礎学校での数学教育は、国際調査の数学成績でみるかぎり、余り成功しているとはいえない。例えば、IEAの到達度調査 (中学2年)では、1981年は20か国中17位、 95年は41か国中22位、2003年は46か国中16位の成績であった。また、OECDの数学的リテラシー調査(15歳児)では、2000年は31か国中15位、2003年は40か国中17位の成績であった。しかし、大学進学直前の生徒を対象にした IEA 調査では常に各国の上位に位置している。  高校3年間で必修として学ぶ教科(最低時間数)は、スウェーデン語(200)、英語(110)、公民(110)、宗教教育(90)、数学(30)、科学(30)、保健体育(80)、芸術(30)で、週あたり30時間以上で職業系コースは2430時間、理論系コースは2180時間履修することになっている。

スウェーデンでは、電卓やコンピュータなどを数学教育の中に積極的に取り入れて、実践している。それは主に、統計や数値計算に利用している。通常中学校では数学の授業時間数は一週間各学年160時間が予定されており、その内容には、中学1年:度数分布とグラフ、計量測定(長さ、面積、重さ、体積、時間、温度)、数値および四則計算、百分率(利息、割引、消費税)、代数(文字と式)、幾何(図形の計量)、中学2年:統計(各種統計表、グラフ)、数と計算(速度、負数、近似値)、百分率(変化指数)、幾何(縮図、立体)、代数(関数、一次方程式)、中学3年:数と計算(分数、比率、指数計算)、統計と確率、代数と関数(方程式と関数)、幾何(相似、平方根、ピタゴラスの定理)等で、日常生活に数学を応用するという立場で構成され、二次方程式や幾何の証明などは中学校のカリキュラムには見当たらない。

学習指導要領には、問題解決、モデル化、コミュニケーション、数学の歴史、テクノロジーを数学教育の特徴として強調している。

理論的指向の色濃い我が国の数学教育に対して、応用面・実用面からのアプローチのスウェーデンの数学教育は、これからの我が国の進むべき方向を示唆しているのではないかと思われる。

参考文献

  • INGVILL M. Stedoy(Ed.) ”Mathematics Education-The Nordic Way” A Pre ICME-10 production pp.11-18、2004
  • Swedish National Agency for Education ”The Swedish School System”,”Compulsory School”,”Upper Secondary School” 2003