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コラム

新しいカリキュラム(私案)

−指導時数の改訂−

2003年3月3日

東京理科大理学部 澤田 利夫

1. 教科の性格・特徴

先に発表した小論「私が考える理想の学習指導要領は −教科の授業時間数に焦点をあてて−」算数授業研究(2002年、Vol.25)(1)について、何人かの先生から質問があった。その主なものは、国語や算数・数学科などの教科に偏重したカリキュラムではないか、音楽科、美術科、体育科等をまとめて芸能教科としたことなどであった。ここでは、それらに関連したいくつかの点を補足したい。まず、学習指導要領は中央教育課程審議会の答申によって、教科内容や指導時数等が決められるが、各教科の関連学協会の陳情等が大きな圧力になって決められることが多かった。それが教科エゴとなって、今回は反対に「総合的な学習の時間」という教科外の時間を生みだす背景の一つになった。教科とは、学校で指導される知識・技能などを内容の特質において分類したもので、その指導は系統的に組織化された内容を、子どもに知的に「陶冶」することを主たる任務とするものである。学校の指導には、これだけでなく、道徳や特別活動など「訓育」を主たる任務とする教科外活動もある。これに今回は「総合的な学習の時間」が新たに加わった。

国語科、算数・数学科や中学校の英語科は他教科の学習にとって用具となり基礎となる言語・数量に関する知識・技能の習得することをねらいとしているから、用具教科とか基礎教科と呼ばれる。社会科、理科、家庭科などは社会・自然・人間生活に関する学問的知識の習得や一定の思想・価値観の形成を図るもので、内容教科とか応用教科と呼ばれる。また美術科、音楽科、体育科などは技能の形成・習熟を目指すことから芸能教科とか技能教科と呼ばれる。また、入学試験などの教科として国語、数学、英語、社会、英語を主要教科などと呼ぶこともある。アメリカや、イギリスなどでは国語、数学、理科を義務教育の重点教科と位置づけている。

2. 現行の指導時数

文部科学省は「学校での教育内容が過密だから、子どもが授業を理解できない」として、昨年4月から実施された小・中学校の新しい学習指導要領では、完全学校週五日制を導入すると共に、小・中学校の基礎教科の学習内容や授業時間数を大幅に削減させた。小学校6年間の算数の総授業時間数は869時間になり、70年代からみると178時間も減少している。これは現在の小学校算数科の1年分の時間数を越えている。中学校の場合も数学科の総授業時間数は315時間になり、70年代からみると105時間と大幅に減少した。削減された時間は、やはり現在の中学校数学科の1年分に匹敵する。また、全教科の総授業時数と算数・数学科の時数の関係で見ると、70年代では小学校全体5821時間に対して算数科1047時間(18.0%)、中学校3535時間に対して数学科420時間(11.9%)であったが、今日では小学校全体5367時間に対して算数科869時間(16.2%)、中学校2940時間に対して数学科315時間(10.7%)になった。つまり、今回の学習指導要領の実施によって、算数・数学科では、小・中学校9年間で2年分の授業が縮小されたことになる。こうした授業時間数の削減が、学力低下の原因になること以上に、これからの日本の子どもたちの数学教育に大きな影響を与えることになるのではないかと懸念される。

3. 各教科の授業時間数

算数・数学科の内容を構成する上で、各教科の時間(単位)の設定からはじめなければならない。各国のカリキュラムやこれまでの我が国のものを参考にしながら、国語、算数・数学(中学では英語)を「基礎教科」、生活、社会、理科、家庭を「応用教科」、音楽、図工・美術、体育を「技能教科」、さらに道徳、特別活動、総合的な学習などを「その他の教科」として、義務教育段階の授業時間配分を行った。(表1、表2)特に応用、技能、その他の教科のうち、理科、体育、道徳は子どもの健全な発育を意図して各学年を通して固定した授業時間数をカッコ内に設定することにした。

表1 教科別授業時数/週当り(小学校)
教科学年 基礎教科
(国語、算数)
応用教科
(理科)
技能教科
(体育)
その他
(道徳)
総時間数
小1 12(8、4) 2 7(3) 2(1) 23
小2 13(8、5) 2 7(3) 2(1) 24
小3 12(7、5) 4(2) 6(3) 4(1) 26
小4 12(7、5) 5(3) 6(3) 4(1) 27
小5 11(6、5) 7(3) 6(3) 4(1) 28
小6 11(6、5) 7(3) 6(3) 4(1) 28
小学校計 71(42、29) 27(11) 38(18) 20(6) 156
表2 教科別授業時数/週当り(中学校)
学年 基礎教科
(国語、数学、英語)
応用教科
(理科)
技能教科
(保健体育)
その他
(道徳)
総時間数
中1 12(4,4,4) 8(3) 5(2) 5(1) 30
中2 12(4,4,4) 8(3) 5(2) 5(1) 30
中3 9(3,3,3) 8(3) 5(2) 8(1) 30
中学計 33(11,11,11) 24(9) 15(6) 18(3) 90

(注)教科は便宜的に次のように分けた。

  • 基礎教科:国語、算数・数学、外国語(中学)
  • 応用教科:理科、社会、生活(小学1・2年)、家庭(中学では技術・家庭)
  • 技能教科:音楽、図画工作(中学では美術)、体育(中学では保健体育)
  • その他の教科:道徳、特別活動、総合的な学習、選択教科
  • 小学校計:小学校6年間の授業時数の合計 中学校計:中学校3年間の授業時数の合計

なお、週5日制の授業であるから、授業時数の1単位時間は、小学校では40分、中学校では45分としてもよいことにする。その時間割の例として、次のような配当を考えてみた。

小学校:

  • 0校時(8:40〜8:55)
  • 1校時(9:00〜9:40)
  • 2校時(9:50〜10:30)
  • 3校時(10:40〜11:20)
  • 4校時(11:30〜12:10)
  • 昼食
  • 5校時(13:00〜13:40)
  • 6校時(13:50〜14:30)

0校時には、朝学習、自習、ドリル学習などに当てる。

中学校:

  • 1校時(8:40〜9:25)
  • 2校時(9:35〜10:20)
  • 3校時(10:30〜11:15)
  • 4校時(11:25〜12:10)
  • 昼食
  • 5校時(13:00〜13:45)
  • 6校時(13:55〜14:40)
  • 7校時(14:50〜15:35)
表3 学年別・教科別時間数の割合(%)
学年 基礎教科 応用教科 技能教科 その他 総時数
  • (注)( )内は現行の学習指導要領に示されている各教科の時間から算出した割合(%)。
    総時数は年間時数を表し、( )内は現行の学習指導要領に示されている総時数。
小学校低学年 53.2(50.6) 8.5(12.8) 29.8(28.1) 8.5(8.5) 1622(1622)
小学校中学年 45.3(41.5) 17.0(17.0) 22.6(22.6) 15.1(18.9) 1855(1855)
小学校高学年 39.3(34.7) 25.0(26.2) 21.4(20.1) 14.3(19.0) 1960(1890)
中学校 36.7(33.3) 26.7(25.9) 16.7(17.0) 20.0(23.8) 3150(2940)

表1、2から、小学校低学年(1・2年)、小学校中学年(3・4年)、小学校高学年(5・6年)と中学校(1?3年)ごとにまとめて、総時間数に対する割合(%)を求めた。さらに、現行の学習指導要領から各項目の時間数の割合を( )内に算出した。

表3のように、私案では基礎教科や技能教科の時間数は小学校低学年に厚く、応用教科は学年進行とともに多くの指導時間数を配置した。また、現行の時間数と比較すると、基礎教科と技能教科では各段階で現行より多くの時間数を割り当てた。一方、応用教科の小学校では、現行より少なく、その他では低学年を除いて現行より少ない時間配当になった。

小学校の基礎教科の学年別の週あたりの配当時間は、次のようになる。

  • 国語:8・8・7・7・6・6時間(学年順)
  • 算数:4・5・5・5・5・5時間(学年順)

中学校の基礎教科の学年別の週あたりに指導時間数は、次のようになる。

  • 国語:4・4・3時間〔学年順〕
  • 数学:4・4・3時間〔学年順〕
  • 外国語:4・4・3時間〔学年順〕

このように基礎教科の時間数を現行より多く割りあてたのは、基礎学力の低下に対する対策の一つと考えたからである。小・中学校を通じて基礎教科の指導時数について言えば、前回(平成元年改訂)とほぼ同じ割合になっている。その他の教科では、小・中学校を通して道徳と特別活動の時間数は各学年1時間ずつ、総合的な学習時間は各学年2時間ずつ割り当て、さらに中学3年に選択教科として4時間を配置した。3年の選択学習の数学の時間では、課題学習、作業、実験、調査、補充的な学習、発展的な学習など生徒の特性に応じ多様な学習活動が出来るようにしたい。また、基礎教科の時間数の不足分に当てることも考えたい。

昨年12月に発表された文部科学省の学習到達度調査結果から、算数・数学の成績は低下していることが分かった。同時に調査した質問紙調査から、算数・数学の勉強は受験に関係なく大切だとする回答は、小学生で80%、中学生で60?70%とその他の教科より高い割合になっている。これは、子どもたちの意識の中に算数・数学が重要な教科であり、出来るようになりたいと考えていることであり、これを満たすような時間的ゆとりをもった内容で指導できる方策を講じなければならない。

参考文献

「私が考える理想の学習指導要領は −教科の授業時数に焦点をあてて−」
算数授業研究、初教出版 2002年、Vol.25

(資料)指導時数の改訂(澤田私案)03.3
時数 教科 小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 教科
1 基礎教科 国語 国語 国語 国語 国語 国語 国語 国語 国語 基礎教科
2
3
4 数学
5 数学 数学
6
7 算数 算数 英語
8 算数 算数
9 算数 算数 英語 英語
10 理科 応用教科
11
12 理科 理科
13 応用教科 生活 理科 理科 理科 理科 社会
14 生活
15 技能教科 体育 社会 社会 社会
16 体育 社会 社会 社会 技術家庭
17 体育 家庭 家庭
18 音楽
図工
体育 保健体育 技能教科
19 音楽
図工
体育 体育 技術家庭 技術家庭
20 音楽
図工
音楽美術
21 音楽
図工
保健体育 保健体育
22 その他 道徳 音楽
図工
音楽
図工
23 総合 道徳 道徳 音楽美術 音楽美術 道徳 その他教科
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総合 総合 道徳 選択総合
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総合 道徳 道徳
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総合 総合 道徳 道徳
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選択総合 選択総合
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